これは観ないと損。あの事件が実はこんな風に起きたんだったなんて!…と,そんなことを突然言われても「あの事件って?」と,なんの話やらさっぱりのヒトも多かろうと思うので簡単に背景を説明しておく。
1992年のアルベールビルから2年後の1994年1月,それまで同じ年に行われていた夏冬のオリンピックを2年ずらすために急遽行われることになったリレハンメル・オリンピックの米国代表と目されていたフィギアステート女子のナンシー・ケリガン(彼女はアルベールビルの銅メダリストだった)は,練習直後,何者かの襲撃を受けて膝にケガを負う。
この影響で彼女はリレハンメルの代表選考を兼ねて行われた全米選手権を欠場。永年のライバルであり,アルベールビル4位,日本の伊藤みどりに次ぎトリプルアクセルを成功させた史上2人目の女子選手,トーニャ・ハーディングが優勝した。ところが襲撃事件から2週間後,ハーディングの前夫ら数名が逮捕されてスキャンダルに。
邦題の通り「史上最大のスキャンダル」かどうかはヒトによって意見の分かれるところだと思うが(オレは「いくらなんでも『史上最大』は盛り過ぎだよな」という意見である),とにかくこの映画はそのスキャンダルの主役,トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)や前夫ジェフ(セバスチャン・スタン)らが,あの事件を回想する「疑似ドキュメンタリー」である。
で,だ。冒頭にああは書いたが,おそらく事件の経緯はこの通りではない。
だってこれぢゃ面白過ぎるでしょ。トーニャやジェフ,ジェフの親友で事件にも大きく関わったショウン(ポール・ウォルター・ハウザー)やトーニャの母親ラヴォナ(アリソン・ジャニー)の行動がまるでコーエン兄弟の書いたシナリオみたいである。そりゃ多少はこういう要素もあったろうけど,カゴイケ夫妻や日大のカントクを見れば解る通り,ニンゲンここまで面白くはなれまい。
でも映画としてはその「面白過ぎる」部分が大成功。マーゴット・ロビーとアリソン・ジャニーによるハーディング母娘の緊迫感ある演技も凄いし,最新技術を駆使したトリプルアクセルのシーンも素晴らしい(ワタシはこれで初めて「なるほど3回転してるんだ」と納得しました)。
そして何をさておいてもポール・ウォルター・ハウザーのこの台詞!
「人生では常に四歩先を考えることだ」。
笑うぞ。