クヒオ大佐 吉田大八監督

 この映画。題名を聞いて,ああ,あれが題材? と思うヒトもおられよう。そう,この映画は,1984年6月に渋谷で逮捕された成り切りアメリカ人詐欺師,鈴木和宏こと自称プリンス・ジョナ・クヒオの結婚詐欺事件をモデルにしたモノなのである。

 と言っても映画の原作である吉田和正の「結婚詐欺師 クヒオ大佐」からして小説なので,ドキュメンタリー・タッチを期待してはいけません。つか,それだとどんなに馬鹿馬鹿しくても笑えないトコ残っちゃうから。ついでにこういうものを「ノンフィクション」とか言い切っちゃうと大変なことになります誰かのように。

 主人公ジョナサン・エリザベス・クヒオ(堺雅人)はエリザベス女王の親戚で米空軍の大佐,結婚式のドレスはあのダイアナ妃のドレスを手がけたデザイナーにたのもう,入籍すれば米軍から5千万円の祝い金が出るなどとコトバ巧みに女性に取り入る結婚詐欺師。

 下町で弁当の仕出屋を経営するしのぶ(松雪泰子)から金を引き出しつつ,博物館の学芸員・春(満島ひかり)にコナをかけ,返す刀で銀座に出没,ホステス未知子(中村優子)の気を惹こうとする。

 が,偶然,姉にかかってきた電話を取ったしのぶの弟・達也(新井浩文)に「Aren’t you Amarican?」と正体を喝破されて窮地に…。日米摩擦へのコジツケとラストのワケワカメな夢想シーンはちと「?」だが,怪しげな人物を実にそれらしく怪しげに演じる堺雅人の怪演に脱帽。


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