1970年,「ゴジラ」の本多猪四郎監督が撮った異端怪獣映画。なんでこれが「異端」かというと,この映画の怪獣たちだけがその後の東宝怪獣映画で一度も使い回しされなかったからである。つまり同じ東宝の怪獣映画でありながら,この映画だけが「ゴジラやラドンやモスラがいない地球」の物語なわけ。
若手カメラマンのクドウ(久保明)は南米への撮影旅行の帰り飛行機の中から,数ヶ月前に行方不明となった木星探査ロケットヘリオス7号が太平洋に落下するのを目撃する。
帰国後,アジア開拓株式会社の極秘プロジェクト,セルジオ島レジャーランドの宣伝写真撮影を依頼された彼は,その島があのヘリオスが沈んだ海域にあることを知ってこれを快諾,同社宣伝部員のアヤコ(高橋厚子),海洋生物学者のミヤ博士(土屋嘉男)らと共にセルジオ島へ向かった。
船上で出会った自称世界風俗研究家のオバタ(佐原健二)を加えた一行はセルジオ島に上陸,しかしそこではアジア開拓の駐在員が巨大なイカのような怪物に襲われるという事件が起きていた…。
肉体を持たない宇宙人に乗り移られて巨大化した,というふれこみの怪獣達の造形はなかなか見事。特にゲゾラは怪獣着ぐるみ史に照らしても(そんなもの照らせるのか)五指に入る傑作ではないだろうか。
当時人気が下降線を辿っていた「ゴジラ」シリーズに替わるものを,という試行錯誤の中で産まれた作品で,ガキの時一度観て地味な印象があったんだがオトナの目で観ると違う印象。これはもっと評価されてもいい作品だな。