トレイン・ミッション ジャウム・コレット=セラ監督

 郊外からニューヨーク、マンハッタンに向う通勤列車ハドソン線。警察を辞して10年、この列車で勤め先である保険会社に通い続けたマイケル・マコーニー(リーアム・ニーソン)は、息子が大学に進学しようという金のかかる時期に60歳で解雇を通告される。馴染みのバーで警官時代の後輩と呑んだ後、この事態をどう家族に説明しようかと思案しながらいつもの列車に。しかし乗車直前誰かにぶつかられ、気がつくと手持ちの携帯を擦られていた。

 列車の中でジョアンナと名乗る女(ヴェラ・ファーミガ)が近づいてきて、「この電車が終着駅に着くまでに、乗客の中に紛れ込んでいる盗品を持ったある人物を発見できたなら、貴方に100,000ドル(着手金25,000ドルと成功報酬75,000ドル)を渡す」と提案する。彼女が下車したあと告げられた場所を探すと確かに着手金が。

 半信半疑だったマイケルだが金を見て気が変わる。10年間通勤していて常連客は概ね把握している。常連客以外で、終点のコールドスプリングスまで行く客を絞り込むのは難しくないとは思うが、どう考えてもこの話は額面通りには受け取れない。常連客の一人に携帯を借り、元同僚の警察官に連絡を取る。彼は早速調査を約束するがその情報はジョアンナに筒抜け。着手金を手にした以上任務を遂行してもらう、妻と息子がどうなってもいいのか、と脅迫されるハメに…。

 設定的に同年代(実年齢はオレより10歳近く上だが)だからというのもあるが、このテの役を演じるリーアム・ニーソンにはばっちり感情移入してしまう。まずは列車内のターゲットを探し、それから逆にそのターゲットがなぜ探されるのかと考える…。金に困りながらそれでも自身の倫理観に反することはできない。いいよなぁこの葛藤。

 この舞台設定によって単なる通勤電車がまるでオリエント急行みたいになる終盤が見事。そしてなにより、こういう列車の路線図を模したエンドロールの遊び心が好き。途中で出てくる(誰の台詞とは言わない)「金持ちを見れば神の考えが分かる」という台詞、和田誠さんが生きてたら「キネマ旬報」に書くよなぁ。


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