ナイフをひねれば アンソニー・ホロヴィッツ著

 作者であるホロヴィッツ本人が登場し、架空の探偵ホーソーンとコンビを組んで犯罪捜査に当る…「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの第4作である。

 前作「殺しへのライン」の事件で散々なメに遭ったホロヴィッツは、ホーソーンとのコンビ解消を申し出る。探偵としての力量は申し分ないが、自分に対しても頑なにプライベートな部分を見せようとしないホーソーンを「主人公」として本を書くことが苦痛なのだ。それでは小説の登場人物としてのホーソーンにリアリティを持たせられない。

 対してホーソーンはミステリの骨子は謎解きであり、オレの私生活など関係ない、と言い張る。もともとこの企画に反対だったホロヴィッツの著作権エージェント、ヒルダ・スタークまでいつの間にかホーソーンにたらし込まれており話しあいは物別れ。

 翌週、ホロヴィッツは自分が脚本を書いた二幕ものの三人芝居「マインドゲーム」ロンドン公園の初日を迎える。終演後に開かれた出演者,演出家などの内輪のパーティに,辛辣な筆致で有名なサンデータイムズの劇評家ハリエット・スロスビーが現れる。影響力を持つ彼女の出現に一同は緊張を隠せない。

 そして劇場に戻って飲み直し、となった深夜、ネットに彼女の書いた劇評が…。それはまさに「口を極めての酷評」で、出演者の一人ジョーダン・ウィリアムズはプロデューサから一同への贈り物であるナイフをケーキに突き立て「殺してやりたい」と口走る…。

 そして翌日、二日酔いのまま目覚めたホロヴィッツは旧知の…そしてあまり芳しくない関係にある警部カーラ・グラショーとその部下ミルズの訪問を受ける。今朝ほどハリエット・スロスビーが刺殺された。凶器のナイフは昨夜ホロヴィッツが受け取ったもの。指紋もホロヴィッツのものしかついていない。斯くして逮捕とあいなり留置場で一晩過ごすことになったホロヴィッツはホーソーンに連絡して助けを求めるのだが…。

 いや面白い面白い。現実とフィクションの境目にかかる霧のような曖昧さがクセになるんだよな、このシリーズ。気がつけば5作目「死はすぐそばに」も既に出てるぢゃないか。読まねば。


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