幹線道路の真ん中でエンストし,にっちもさっちもいかなくなる。追突されてはえらいことなので,トランクからかねて用意のコーンを出して車の前後左右に配置する。と,いきなりカラスの大群が飛んで来てせっかく置いたコーンをくわえて行ってしまう。またコーンを置く,カラスが来る。くりかえすうちに気がつくと,私の車が止まってから一台の車も通り過ぎてはいない。
クルマの中では結婚した覚えのない妻と,設けた覚えのない二人の子供が不満そうに空など眺めている。私は妻に,間もなく保険会社のオトコが(オンナかも知れないが)助けに来てくれるさ,コマーシャル通りに,と軽く言ってみるが,妻はなにかもっと深刻な事態を予感しているらしく,ただ黙って長女の髪を撫でている。
けたたましいサイレンを鳴らしながらパトカーがやって来る。勢いよくドアを開けた若い警官は私の元に近寄って,こんなところで何をしているのですか間もなくここをやんごとない方のパレードが通るのですすぐにクルマをどかしなさいと言う。どかしたくても動かないのですと答えると彼はサディスティックな笑みを浮かべ,そうですか動かせないのですかひひひひひ。
やにわに妻が助手席側のドアを開ける。私はクルマから出ようとする妻の腕をつかもうとするが,妻はかまわず警官に近づき,私には見せたことのない媚態を見せて彼に抱きつく。そうか色仕掛けで取りなしてくれるのかと思っていた私は,妻が二人の子供を連れてパトカーで去って行くのを見送って呆然。
やがてパレードが近づいて来る。先導する白バイの運転手は私を見つけ,無礼者めと銃をかまえる。私はなすすべもなく両手を上げて恭順の意を表すが,進路にクルマを停めていては言い訳はできない。私は撃たれクルマはどかされて、パレードは進んで行く。薄れ行く意識のなか、空には祝日を祝う五色の飛行機雲。