第二次世界大戦中の1939年,ナチス・ドイツに捕らえられた偽札造りのサロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)は,ザクセンハウゼン強制収容所に連行され,彼の過去を知る親衛隊少佐ヘルツォーク(デーフィト・シュトリーゾフ)の指揮のもと,集められた他のユダヤ人と共に贋ポンド紙幣,そしてアメリカを標的とする贋ドル紙幣の製作,すなわちイギリス経済の壊滅を狙った「ベルンハルト作戦」に従事させられる。
当初こそ生き延びるためにも早く完璧な贋札を,と考えていたソロヴィッチだったが,妻をアウシュヴィッツで殺された印刷工,アドルフ・ブルガー(アウグスト・ディール)のサボタージュを擁護し,才能を買っていたロシア系の画学生コーリャ(セバスチャン・アーツェンドウスキ)の結核のクスリを手に入れようと奔走する。そして戦争も終結に近づいた1945年の謝肉祭の直前,完成しなければ仲間5人を射殺すると脅された彼は…。
シナリオは生き延びたアドルフ・ブルガーの証言にフィクションを加えたもの…なるほど,それでブルガーの役所がちょっと不自然にかっこいいのか,とちょっとだけ思わんでもないが,そんな感想が不謹慎に思えるほど(思えてもそういう感想を持つのはやめないんだけどさ)濃密な死の影の圧倒的な存在感! いやぁやっぱり一番怖いのはニンゲンなんだよね。