ロスト・ケア 前田哲監督

 舞台は長野県諏訪湖畔の架空の街・八賀。この街の民間のケアセンターで介護職員として働く斯波宗典(松山ケンイチ)は、その人柄と丁寧な介護により利用者や同僚の信頼を集める存在だった。

 ある日、彼が担当していたある独居老人の住まいで、老人本人と斯波の上司であるセンター長・団の死体が発見される。団には金にまつわるよくない噂があったため、当初は団が介護のために預かっている鍵を利用して盗みに入り、気付いた老人を殺害、室内を物色後、逃げる際に階段を踏み外して転落死した…と思われた。

 ところが捜査が進むうち、その晩は家にいたと供述していた斯波のクルマが丁度その頃に被害者宅近隣の防犯カメラに…。追求された斯波は、被害者が心配で深夜に尋ねたところ盗みに入っていた団と鉢合わせして格闘になり突き飛ばしてしまった、と正当防衛による過失死を主張する。

 しかし家宅捜索で押収された彼の介護ノートや勤務記録を洗ううち、県の平均より有意に多い介護対象者の死亡が彼の休日に集中していることが明るみに出る。取り調べに当った検事・大友秀美(長澤まさみ)は別の介護対象者宅から見つかった盗聴器を手に斯波を追求。遂に斯波は42人の老人をその手で殺害したと自供するが、同時に「それは救いだった」と語るのだった。

 うーん、ヘビーな映画だなぁ。実際に90を超えた年寄りを介護してるオレにはあんまり冷静にレビューできないテーマでもある。主演二人に加えて斯波が最初に手にかけた父親を演じる柄本明、ちょい役だが大友に「お願いだがら刑務所に入れてくれ」と懇願する老婆綾戸智絵、女手一つで大友を育て上げ、今は施設にいる母親藤田弓子などの老優たちの演技が重いリアリティを醸し出す。


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