ヴァレリアン 千の惑星の救世主 リュック・ベッソン監督

 公開当時、リュック・ベッソン作品イマイチなことが多かったので,予告編を観てスルーしようと思っていたんだが,信頼できるスジから「これは面白い,でも宣伝が下手だから客が入ってない,従って上映期間が短い,観に行くのならお早めに」という報せが入ったので焦って観に行った。

 確かになかなか面白い。

 もともとはベッソンの「フィフス・エレメント」などでコンセプト・デザインを担当したフランス人漫画家ジャン=クロード・メジエールが1960年代に発表した「ヴァレリアン&ロールリンヌ」という漫画。

 このシリーズの大ファンだったベッソンは90年代からこの作品の映画化を目論んでいたが,フィフス・エレメントの経験から「現在の技術であれを作ろうとしてもチャチくなるだけだ」と先延ばしにしていた,らしい。

 ストーリー・ラインはやたら錯綜しているのだが,舞台となるのは「千の惑星の都市」と呼ばれるほど雑多な種族がひしめき合っている巨大な宇宙ステーション「アルファ」。

 ある日ここで原因不明の放射能汚染が発覚,国防大臣(なんとハービー・ハンコックだ)は銀河きっての腕利きとして知られるエージェント,ヴェレリアン(デイン・ハーン)とその相棒ローリレーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)に原因の調査と問題の解決を命じる。しかも10時間以内に。

 あとはもうおもちゃ箱をひっくり返したような展開。一つ一つのシーンに笑いこけたり目を見張ったりしながら,うっかりすると今なんで主人公たちがここでこんなことをやってるのかわかんなくなること再々。まぁ最後に一応のスジは通るんだけどね。

 冒頭のスジが言うように日本公開以前に興行的には失敗と断じられており,批評家からの評価も低い。いやでも面白い。

 なんつか「銀河ヒッチハイク・ガイド」(原作はイギリスのラジオ・ドラマ)に通じるような,まるであの映画のポジみたいなテーストの中に「スター・ウォーズ」のようなアメリカ作品にはない,欧州的陰影(というか底意地の悪さというか)があってそれが「変にいい」のである。


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