刺さった男 アレックス・デ・ラ・イグレシア監督

 スペイン,マドリード。若い頃,コカコーラのキャッチ・コピー「人生のきらめき」で一発当てた広告マンのロベルト・ゴメス(ホセ・モタ)。数年前に独立したが不況の嵐で目論みは外れ,ここ2年間は妻ルイサ(サルマ・ハエック)の稼ぎを頼りに就職活動を続ける毎日。

 今日も今日とて昔の仕事仲間が経営する会社に仕事を求めに行き慇懃無礼に追い払われた彼は,センチメンタルな感情に突き動かされ,かつて新婚旅行でルイサと訪れたカルタヘナの町へクルマを走らせる。

 着いてみると夫婦で泊まった思い出のホテルには博物館の看板が。なんでも地下からローマ時代の遺跡が発見されたため,ホテルを閉鎖して博物館に改装したとか。今も発掘作業が継続中で,しかもこの日は市長がマスコミを呼んでこの施設の観光PRをしている真っ最中。

 発掘中の遺跡について解説しつつ館内を行く博物館長(ブランカ・ボルティージョ)と記者達の行列に巻き込まれたロベルト,妻と泊まった懐かしいホテルの痕跡だけでも見つからないかと立ち入り禁止のロープの向こうへ。警備員に見とがめられて慌てふためいた彼はクレーンに吊られている石像にしがみついて空中へ。落下した先には発掘現場を支える鉄筋が…。

 なにごとかと駆け寄る人々を見て起き上がろうとするが身体が動かない。なんと直径1cmもある鉄筋が後頭部に深々と突き刺さってしまったのだ。救急隊,消防隊,外科医たちが鳩首を集めて救出作戦について相談する中,マスコミが飛ばすヘリコプターを見つけたロベルトは今や世間の注目の的である自分の「商品価値」に気づく。

 ロベルトの電話を受けてマーケティング会社からやってきたエージェントのジョニー(フェルナンド・テヘロ)はさっそく「スペイン中が注目しているこの状況を利用しない手はありません」とテレビ局に連絡,出演料15万ドルでロベルトの独占インタビューを持ちかける。しかし時を同じくして現場に駆けつけたルイサは…。

 いずこも同じ広告屋の商魂,というべきか。監督はあの「気狂いピエロの決闘」のアレックス・デ・ラ・イグレシア…ということは結末はきっととんでもないことになる(あの「気狂いピエロ」の結末をあなたは想像出来たか?)わけで,あとはその結末を気に入るかどうかである。ちなみにオレは気に入りました。


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