地獄の警備員 黒沢清監督

 ずっと観たかったのだがようやく日本映画専門チャンネルで放映してくれた。しかも主演・松重豊、いまをときめく井之頭五郎の回想つきである。これは楽しかった。

 1992年の公開だが、舞台はちょっと前のバブル期か。有名絵画への投資に乗り出した中堅商社にその分野の「目利き」として採用された成島秋子(久野真紀子)は、まだ社員にも認知されていない絵画取引部門12課に配属される。しかし課を率いる久留米(大杉漣)は小心者fで3千万円以下で買える絵画にしか興味がなく、しかも秋子にセクハラする下心満タン(当時はまだセクハラと言う言葉なかったかもだが)。

 時を同じくして会社の警備全般を委託されている会社に長身の新人が配属される。その男、富士丸(松重豊)は、元力士で数年前殺人事件を起こしたが、精神鑑定の結果責任能力無しと判定され釈放された男だった。富士丸は早速、素行不良の同僚警備員を殺害、死んだ男に借金のあった古参警備員を取り込み、次々と殺人を繰り返して行く。

 放映後の松重の回想によれば、中に犠牲者がいるという設定のロッカーの破壊(破壊のあと底部かrら血が出てくる、予算がないので一発勝負だったらしい)とか、とにかく場面を暗くして殺人鬼を背後から撮ることで「すごくむごいことをしているんだろう」と観客に想像させるテクニックとかそれまで俳優としての仕事が舞台中心だった彼にはいろいろ新鮮だったという。

 確かに「低予算映画だよなぁ」というキズはあちこちあるけれど、演出の妙がそこかしこに感じられる傑作。このあと長い間「でかくてこわい人物の役しか来なかった」のももっともだと思わせる松重豊の「コワさ」に感動する。このインタビューはないけどAmazon Primeで500円で観られるようですな。


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