大誘拐 RAINBOW KIDS 岡本喜八監督

 岡本喜八監督「大誘拐 RAINBOW KIDS」である。みんな死んぢゃったなぁ。この映画の出演者で既に亡くなったのは北林谷栄,緒形拳,天本英世,奥村公延,中谷一郎,藤木悠…。こう並べると錚々たる顔ぶれだよね。

 2004年に日本映画専門チャンネルで放送があった時,当時書いてた個人サイトで「東宝はなんでこの大傑作のDVDを出さんのか,英語字幕をつけて海外でも売るべし,べし,べし!」と煽った。その後DVDの発売は実現しこうして手元にあるわけだが英語字幕が入ってないのは残念である(実は日本語字幕は入っている)。

 とにかく何回観てもこいつは傑作であります。

 冒頭,大阪・堺刑務所の塀をバックに憂歌団の「出直しブルース」が流れ,出所したばかりの2人のチンピラ,マサヨシ(内田勝康)とヘイタ(西川弘志)に兄貴分のケンジ(風間トオル)が運転するクルマが近づく。刑務所内で知り合って意気投合したこの3人,人生をやり直す資金を得るための犯罪を計画中。

 ところがその中身が「誘拐や」と聞いてまずマサヨシが「あにきぃ,あかん。あれだけはあかんわ。可愛い子さらって金強請って…」と反対,ヘイタも「あれ,ニンゲンのすることやないわ」と…。スリやカッパライで服役していたが基本的にこいつら善人なんですな。しかしケンジが「誘拐っても子供とちゃう,紀州一の大金持ち,82歳のお婆ちゃんや。身代金は総額5000万,お前等には1000万ずつやで」と説得して「レッツ・ゴー」と映画が始まる。

 その標的のお婆ちゃん,柳沢トシ子刀自82歳を演じるのが当然ながら北林谷栄。行儀見習いの紀美(松永麗子)と共に山歩きしているところを連中に取り囲まれ,紀美はここに残すということでハナシをつけて誘拐…されてやることに(ここで三本締めです)。

 アジトに運ばれる途中のクルマの中で一味の計画の杜撰さを指摘。そんなことでは和歌山県警本部長イカリはん(緒形拳)の目はごまかせやせん,お前らすぐに捕まってしまうでぇ,と脅し,行き先をかつての女中頭・中村くら(樹木希林)が住む山奥の村に変更させる。その後もなんやかんや言うてるうちに,事実上この誘拐団の首領・頭目に。

 一夜明け,自分のカタに要求される身代金が5000万と聞き激昂。「私をなんやと思うてる。やせても枯れても大柳沢の当主やで,100億や,一銭たりともまけまへん」と言ってすっくと立ち上がる辺りからもう観ている誰もがこのお婆ちゃんのトリコである。ああ,書いてるウチにまた観たくなってしまったやんか。


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