舞台は大戦間時代。売れない新人女優マドレーヌが取り乱した様子でパリ郊外の大邸宅の門を出てくる。そのまま彼女はパリ市内まで二時間ほど歩き、アパートのドアを開くとそこではルームメイトの新人弁護士ポーリーヌが大家を相手に溜まった家賃を待ってくれと交渉中。なんとか大家を追い返した二人、ポーリーヌは有名映画プロデューサーに呼ばれて彼の自宅を訪れた結果を尋ねるが、マドレーヌの答えは端役をやるから愛人になれと言われ襲われたので噛みついて逃げてきた、というもの。
なによ、愛人だなんて、と憤慨するマドレーヌ。そこに彼女の愛するアンドレがやって来る。彼は大企業ボナールタイヤの御曹司でハンサムだが働いたことのないボンボン、しかも競馬好き。父親の勧める金持ち女と結婚すれば持参金ががっぽり入るからキミを愛人にして幸せにしてあげられる、と。その提案に激昂したマドレーヌは彼を追いだし銃をとり出して自殺すると言い出す。必死で止めるポーリーヌ。
そうこうするうちまた来客。今度の訪問者は刑事。今日マドレーヌが訪れた屋敷で映画プロデューサーの射殺死体が発見された。あなたが彼の屋敷を出たのは何時ごろか、その時怪しいヤツは観なかったか、と訊くが彼女を疑っているのは明らか。二人が気を取り直して映画を観に行くとその隙に管理人に部屋を開けさせ、マドレーヌの拳銃を証拠物件として押収してしまう。そしてマドレーヌはプロデューサー殺人犯として裁判に…。
弁護に立ったポーリーヌはここで真実を主張しても勝てないと判断、殺人を認め、それが性的暴行から逃れるための正当防衛だったと主張する。彼女が書き、女優マドレーヌが被告席で演じた「芝居」は法廷を圧倒。かくしてマドレーヌは無罪を勝ち取り、フランス中の話題になったことで仕事が次々と舞い込んでくる。しかしその大成功に酔いしれる間もなく、二人を訪ねてきたのは無声映画時代の大女優オデット、プロデューサー殺しの真犯人は自分で、だからあなたの名声はあたしのものなのよ,と…。
まず、なんと言ってもテンポが抜群。マドレーヌが屋敷を逃げ出してから法廷での大逆転まで息もつかせぬ展開で畳みかけ、栄光をつかんだことで一息つくと今度はまるで「バットマン」の悪役みたいなオデットが出てきて新たなジェットコースターが走り出す。話の端々にフランスにおける女性の権利獲得への闘いをにじませつつ、それをまた実にフランス風なエスプリに包んでスクリーンに映し出す。
IMDbのコメント欄には「オーバーアクトが酷すぎ、出来の悪いフレンチ・コメディの典型」という評が載ってたが、このシナリオをオーバーアクトしなくてどうするの? 働かないアンドレの「ボクの仕事はキミを愛することだ!」という言い訳とかマジメな芝居でやられてみろ、それこそとんでもないバカ映画になっちゃうぢゃん、とワタシは思いましたよ。