単行本のオビにはこうあった。「ダーウィンが見つけ得なかった『中間形態の化石』が,いま次々と発見されている」。
どっから話をはじめようかな。なんつか我々は,自分がガキのころに受けた教育・勉強がいつまでも「最新のもの」だと考えがちである。でもね,オレたちが勉強してない間も化石は発見され研究は進んできたのである。テレビや携帯電話だけが進歩したわけぢゃないのである。
例えばオレが少年時代に読んだ(題名は正確ぢゃないと思うが)「マンガ人類の歴史」みたいな本では大雑把に,人類は「猿人(アウストラロピテクス・アフリカヌスとか)→原人(ピテカントロプス・エレクトス)→旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)→新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)」てなミチスジで進化してきた,ことになっていた。
で,オレと同年代で子供のころにこのテの本を読み,それ以降そういう方面に興味を持たずディスカバリーチャンネルも観ず日経サイエンスも読まずに今日まで生きてきました,ああ談志がなくなって改めて昭和が終わったような気がしますね,ズズ(お茶をすする音)というヒトの多くは,あの本で得た知識をいまだに確固たる事実と信じている。ヘタすると風呂に一緒に入った時とかに偉そうに子供に説明とかしちゃってるかも知れない。
が,違うのだ。ピテカントロプスは随分前に人類に組み入れられていまは「ホモ・エレクトス」になってるし,旧人ネアンデルタールと新人クロマニオンはヨーロッパで同時代に共存し,交雑していたと考えられている。
約12,000年前(日本でいうと縄文時代である)まで,インドネシアの一部で遥か昔に我々と枝分かれしたらしい人類ホモ・フロレシエンシス(ホモ・ネアンデルターレンシスの近縁種だと考えられている)が狩りをしたりして生存していたこともわかっている。
吃驚でしょ?
ちょっと乱暴な説明になるけど,オレたちが子供のころの古生物学ってのはまだ発生学や遺伝学の研究成果をキチンと組み込んでなかった。
が,1970年代から徐々にそうしたものを視野に入れた研究がされるようになり,新たに発見された化石だけでなく,既に研究され結論が出たことになっていたものについてもその視点から見直されたりして,今まで謎だったいろんなことが解明されつつある。いまや古生物学は科学の中でも日々とんでもなくダッシュな展開を見せてる学問で,この本はその成果の一部を素人にも解るように紹介してくれているわけなんだな。
もうね,どの章,どのページをめくってもクリビツテンギョウほんまかいなの連続なんだが,なかでも「ええ,もうあれ,違うってわかったの?」と思ったのはあの映画「ジュラシック・パーク」の主役(だよね?),ヴェロキラプトルには羽根が生えていたって話(2007年に発見された化石の前肢にその痕跡があった)。ティラノサウルスにも羽根とまではいかないが羽毛みたいなものが生えてた可能性があるそうなのである。