かなりへビィな映画、いや、ドク・エメット・ブラウンに「重さは関係ない」と言われそうだが。
主人公・筧井雅也(岡田健史)は東京の所謂Fランク大学の学生。一家は祖父祖母、父と教育者で、雅也も教職に就くべく子供の頃から期待されていたが大学受験に失敗。祖母の葬儀で戻った実家は彼にとって居心地のいい場所ではなかった。
そんな彼に、中学時代学習塾の帰りに良く寄ったベーカリーの店主で、その後24人の連続殺人犯として捕まり、死刑が確定している榛村大和(阿部サダヲ)から封書が届く。雅也にとっては今でも「優しいパン屋さん」でしかない榛村はその手紙で自分のいる拘置所に逢いに来てくれと乞うていた。
拘置所のアクリル越しに見えた榛村は昔のままのおだやかな口調で、自分の罪は罪として償うつもりだが、起訴されたうちの最後の一件は自分ではない。他の被害者と年齢も違うし、殺害後の死体の扱いも違う。つまり殺人者が一人、未だに野放しにされているんだ、君に調べて欲しい、と言う。
榛村の弁護士の事務所の「バイト」という立場を得てこの事件を調べ始めた雅也。自分が中学生として彼の店に通っていた頃、彼は店に来る高校生のなかから「好み」のタイプを選び、親しくなり、拉致して拷問。肉体と精神の両面からいたぶることを喜びとしていたのだった。
やがて雅也は古い写真から、自分の母・衿子(中山美穂)が幼いころ榛村と同じ里親に預けられていたこと、望まぬ妊娠をしたことでそこを追い出されたことを知る。もしかして自分は榛村の息子なのか? 悩む彼の前は最後の事件で榛村の有罪を立証することになった青年・金山一輝(岩田剛典)に出会う。一輝もまた幼い頃から榛村に操られていた一人だった…。
とにかく阿部サダヲがスゴい。いやスゴいのは知ってたんだけど、これはまた新しい阿部サダヲを見せてくれたんぢゃない? 逆に言うと彼の印象が強すぎて他の登場人物があんまり鮮明ではないような気もするが。
そうそう、どうでもいいことだけど、榛村が何人目かの犠牲者に映画館で「こういう映画好きなの?」って声をかけるとき一瞬スクリーンが見えるんだけど、あれヴィンチェンゾ・ナタリ監督の「NOTHING ナッシング」だよね。オレも映画館で観たが、あれを観に行く高校生だったらあの台詞はどんぴしゃ刺さると思う。いいセレクションだなぁ。
