殺人鬼の存在証明 ラド・クヴァタニア監督

 2021年公開のロシア映画。1970年代から90年代にかけて50人以上の女性が子供を殺害したと言われる連続殺人犯、アンドレイ・チカティーロをモデルとした作品と聞いて、リチャード・フライシャーの「絞殺魔」(1960年代のボストン絞殺魔事件を題材にした映画)みたいなものかしら、オレが知る限りチカティーロを題材にした映画は初めてのはず、と期待して観た。

 1991年、何者かに襲われ足を刺された女性が森の近くの道路で保護される。犯人の手口は1970年代の終わりから10年以上続く連続殺人犯のものと一致。しかし大きな問題があった、その事件の犯人は数年前に「ボス」と渾名されるすご腕捜査官イッサの手によって逮捕・処刑されていたはずだったのだ。

 事件の発生を受けて家族のパーティから呼び出されたイッサはこの事件の捜査の経過を想起する。知能的殺人犯として名を馳せた「チェスプレイヤー」を逮捕したことで一躍脚光を浴びた彼は1988年、首都モスクワから遠く離れたウクライナ国境付近で発生した連続殺人事件解決の切り札として送り込まれる。

 従来の伝統的な捜査手法を一新した彼は犯人と思われる男を拘束するが釈放、以降は迷走を繰り返し、遂に上層部の「真犯人が必要なのではない。罪を認めるものが必要なのだ」という方針に屈してしまう。精神的疾患を抱える双子を拷問で自白に追い込み、事件は解決した…はずだったのだ。

 シーンごとに1989年と1991年入れ替わる構成に最初は戸惑うが、事件の輪郭が見えてくるにつれこの描き方の効果が現れてくる。イッサの方針に納得できず警察を辞したセバスチャノフの動き、イッサの不倫、捜査の過程で出会った特異な症状を持つ精神障害者…それらすべての伏線が回収されるラスト20分の快感はすごい。いや全然期待以上、これ観てないヒトは是非観て欲しい。


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