霧の旗 西河克己監督

 山口百恵&三浦友和コンビ(というか今はご夫婦ですけど)の作品を実はあんまり観ていないんだが,純愛系文芸作品が多かった記憶があるのでこれは異色なんぢゃないかな。

 北九州,小倉で起きた殺人事件。殺されたのは高利貸しを営んでいた老婆,現場に残された指紋から,彼女に借金があった小学校教師・柳田(関口宏)が逮捕される。彼の無実を信じる妹・桐子(山口百恵)は裁判所で耳にした評判をたよりに上京,かつて人権派で鳴らした弁護士・大塚(三国連太郎)に弁護を依頼しようとするが,すっかり偉くなって与党重鎮とも付き合いのできた大塚は桐子が弁護料が払えないことを理由に依頼を断り,数年後,柳田は控訴審途中で獄死。桐子の消息も不明となる。

 大塚の事務所で拒否される桐子に逢い,その後も何度か消息を尋ねる手紙を送っていた雑誌記者・阿部(三浦友和)は,ある日仲間と訪れたクラブ「海草」で,ホステスとなっている桐子に出逢う。阿部は桐子に兄の汚名をそそぐ手伝いをしたいと申し出るが,桐子は「すべて過去のこと」と取り合わない。

 そんなある日,桐子の勤めるクラブの経営者の弟で,ホステスの信子(児島美ゆき)や大塚の愛人・径子(小山明子)と関係を持っていた杉浦(夏夕介)が殺される。信子に頼まれて杉浦を尾行し,径子が死体を発見する現場に居合わせた桐子は,その場では径子の無実の証人になると約束しながら警察の事情聴取にはこれを否定。この桐子の態度が自分への復讐であると察した大塚は…。

 原作を読んだのはずいぶん子供の頃なので(たぶん中学生くらいだ,一時松本清張に夢中だった),今思うと男女の機微とかがわかんなかったんだな。おそらくこの映画が原作そのままではなかろうが,あんだけ尊大だった大塚弁護士が妻(ちょっとしか出てこないが加藤治子のタタズマイは見事)に逃げられても愛人・径子の無実を証明しようと奔走する姿にあのころとは違うものを感じる。

 その大塚にさらにもう一段の復讐をしかける桐子の非情…ココが女優・山口百恵の真骨頂! 倍賞千恵子が主演した1965年版(山田洋次監督)も観てるがこの役のこの心情は絶対,山口百恵だと思う。それにしても77年ごろの新宿ってロンドンとかハワイとか,なんだかチェーン系のキャバレーばっかりだったんだね。


投稿日

カテゴリー:

投稿者: