夏を殺す少女 アンドレアス・グルーバー著

 オーストリア,ウィーン。少女時代に負った心の傷と決別できない弁護士リニー・マイヤーズは,自分が担当したウイーン市内での元小児科医のマンホールへの転落死と,遠く離れたアルプス山中でのミュンヘン市議会議員の交通事故死の報告書に,同じ特徴を持つ少女が現れることに気づく。透き通るような金髪と青いショルダーストライプのワンピース…。

 彼女はアルプスの件を担当している上司,ホロベックに電話をかけてそのことを伝えようとする。が,それに対しホロベックは普段とは打って変わったきつい口調で首を突っ込むな,と拒絶。

 そしてその電話の直後,彼は住居であるマンションの24階のバルコニーから転落して死亡した。前後の状況から警察は事故死と判断したが,リニーには3人の死に関連があるとしか思えなかった。

 同じ頃,ドイツ,ライプツィヒ。自殺した入院患者の死体検分のため,郊外にある精神病院マルクレーベルグ・メンタルクリニックを訪れたライプツィヒ刑事警察・機動捜査官ヴァルター・ブラスキーは,ジン500ミリリットルを飲んだあとパラセタモール1000ミリグラムを左ひじの内側に静脈注射して死んだという少女ナターシャが,左利きであった証拠に気づく。少女は殺されたのだ。

 入院してから一言も口を利いたことがなかった身寄りのない少女を誰がなんのために殺さなければならないのか。

 やがてヴァルターは,ナターシャとほぼ同じ経緯で同じ時期に入院した少年マルティンがナターシャの死のたった3日前に心不全で死亡していることを知る。そしてこの病院において死亡した患者は,過去5年でその二人だけ。これが偶然のはずはなかった。

 3件の事故死に絡む金髪の少女の正体を追うウィーンの弁護士と,精神を病んだ少年少女の連続殺人を追うドイツの刑事。二人の軌跡が交わる時,無関係に見えた2本の線が絡み合い,恐るべき真相が明らかになる。いやあこれは面白かった。「〈5〉のゲーム」のウルズラ・ポツナンスキといいこのヒトといい,ドイツ,オーストリアのミステリというのは結構な金脈かも知れんな。

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?tag=monkeybusines-22&creative=9325&camp=1789&link_code=as2&path=ASIN/4488160050

投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: