悪の猿 J・D・バーカー著

 秋も終ろうとしているシカゴ、逆上したコンビニ強盗にたまたま居合わせた妻を殺された殺人課刑事ポーターは、その痛手から立ち直れないまま復帰。その直後、なぜかある交通事故の現場に呼び出される。気づかいながら彼を迎えた相棒ナッシュによれば、初老の男がバスに跳ねられて即死した。目撃者によれば、彼はまるで走ってくるバスに飛び込んだようだったらしい。そして死者は、その場に小さな白い箱を残していた…。

 その箱を見てポーターは自分が呼び出された理由を理解する。それはここ数年の間、彼らが追っている連続殺人犯、通称「四猿」に結びつく箱だったのだ。「四猿」の手口はこうだ。まず若い女性を誘拐する。そしてその耳を切り取り、被害者の身内に送り付ける。当然警察が捜査を開始するが、被害者は見つからず、数日後くりぬかれた目が、最後に舌が同じように送り付けられ、まもなく死体が発見される。バスに跳ねられて死んだ男の箱にはまさに人間の耳が入っていた。

 安いスーツにサイズの合っていない高級靴を履き、検視の結果末期癌に侵されて余命いくばくもなかったであろうこの男が本当に「四猿」本人なのか。やがて耳の主が次期市長とも噂される街の大物アーサー・タルボットの隠し子エモリーと判明。ポーターは手がかりを捜して男の持っていた不気味な「日記」を読み始める。それは異常な一家の異常な記録だった…。

 会社帰り、時間潰しに入った本屋でふと手に取ったこの小説、邦訳が出版されたのは2018年というから5年前である。いやあ、怠ってたなぁ。こんな面白い本を見過ごしてたのか。まぁ耳を切ったり目をえぐったり、その辺の描写が結構グロいので、誰にでもお勧めできるわけではないが、ミステリとしてもサスペンスとしてもかなりの高水準であります。ちょっと調べたら続編もあるみたい。読まなくちゃ!


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