江戸バレ句 戀の色直し 渡辺信一郎著

 「バレ句」と言ってこのページの読者にその意味がわかるヒトがどのくらいいるかイマひとつ分からないが,バレは漢字で「破礼」と書き,早い話が現代語で言えば「エッチなこと」である。 

 「バレ句」というのはそのテのことを題材にした川柳……この川柳というのも江戸時代の個性的点者(前句付けなどの選者)である柄井川柳から来てて,つまり「柄井川柳が選んだような句」というトートロジー的定義のシロモノなんだが,のこと。 

 能書きを垂れるより実例を上げようと思うがそういうことなのでもしあなたが18歳未満である場合には,今すぐYahooとかに飛んでください。よろしいな。

 「恋の味娘たもとを噛んで知り」 〜江戸期の言葉では「恋」ってのはずばり性交渉を伴う男女関係のことなんですな。で,つまり娘はたもとを噛んで声を殺してその味を知ると。これなどはまだ婉曲で「色っぽい」範疇だけど,「もうちつときつくきつくと目を瞑り」 〜ここまで来るとかなりロコツな嬌声。「毛虱のために倅は出家する」 〜これはケジラミ退治のためにあそこを剃るという話。「間男は抜き身亭主は出刃を持ち」 〜わはは,これは解説不要ですな。

 いやこの本はそういうバレ句を鑑賞するだけでなく,とかく散逸しがちな資料を丹念に漁った労作中の労作なんである。紹介されている句こそバレ句ばかりだが,江戸は宝暦期に活躍した初代から,明治の六代目までの「川柳」史にもなっている。

 だいたい新聞とかに川柳を投句しているおじさんおばさんにもこれが元々点者の名前だったことを知らないヒトがいるのではなかろうか(と偉そうに書いててオレがそうだけどさ)。とにかく上のように楽しい上に、いろいろと目ウロコの一冊であります。 スケベなヒトはもちろん、そうでないヒトにも強くオススメいたします。


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