哀れなるものたち ヨルゴス・ランティモス監督

 原作はスコットランド人作家アラスター・グレイの同名小説なんだそうだが未読。ある日ロンドンブリッジから一人の若い女性が身を投げる。彼女の遺体はまた温かいうちに発見され、天才だが変人としても名高い外科医ゴッドウィン・バクスターのもとに運ばれる。ゴッドウィンは彼女が臨月に近いのを見て取り、なんとその胎児の脳を母親の頭蓋に移植することで彼女を蘇生させる。斯くして「身体は大人の女性だが精神は赤ん坊」という状態でこの世に出現した女性に、ゴッドウィンは「ベラ」と名前を付ける。

 ゴッドウィンは老い先短い自分の代わりにベラを保護させるべく、助手のマックス・マッキャンドレスを彼女と結婚させようとする。しかしそれ依頼された弁護士ダンカン・ウェダバーンに誘惑されたベラは、結婚する前にウェダバーンと冒険の旅に出たいと言い出す。なにを思ったかゴッドウィンはこれを承認、ベラはウェタバーンと共に国外へ。欲望に忠実で好奇心の塊である彼女の言動は行く先々で騒ぎを引き起こし、遂にはウェダバーンを破産に追い込む…。

 とにかくこの破天荒な設定の主人公ベラを演じるエマ・ストーンがすごい。歩き始めたばかりの幼児のような足の運び、思うようにならない時の駄々のこねざま。いたずらをたくらむ表情など、いやあ俳優って怖いなぁと思わせる。そして物語、これ、出だしこそ「フランケンシュタイン」なんだが、実は「ピノッキオ」なんである。そしてもちろん「それらの女性版」であることも重要。あけすけにエロいし好き嫌いの分かれそうな作品だけど、ワタシはものすごく面白かった。ある意味で昨年の「バービー」と並べ称されるべき傑作。


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