アマゾン文明の研究-古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか 実松克義著

 書名を見て「アマゾン文明って何だ?」と思いました?

 いや何を隠そうオレもそう思ったから読んだんだけどこれ,数年前にはテレビでも取り上げられた話なんだそうで,要するに今までただただ熱帯雨林と湿地が拡がっているだけだと思われていたアマゾン川流域に,あのマヤやインカよりも古くて大規模な文明の痕跡が発見されたってんである。ご幼少のみぎり,NHKの「未来への遺産」に胸躍らせたモノとしてこれを放っておけましょうか。


 著者であり,立教大学ラテンアメリカ研究所の所長である実松先生によれば,この文明が今まで発見されず…いや発見はされていたんだけど,有名にならずにいたのはこれが徹底的にエコロジカルな「土の文明」であり,たとえばピラミッドやストーンヘンジ,あるいは神殿や宮殿といった石やレンガによる巨大構造物を造らなかったからだという。

 しかしその文明の主たちはあの大アマゾンの水流を管理して人造湖を作り,痩せた土壌を改良して農業を営んでいた。上空からの写真では,自然の産物では絶対にない直線的な通路テラプレンや雨期にも水没しない丘陵地ロマ(アマゾン流域は土壌が均一なため,こういう地形は自然には絶対にできないそうな)などが確認できる。


 いやね。読み終わってからいろいろ調べたところ,実松先生がこの文明を一般向けに紹介した前著「衝撃の古代文明 第五の大河文明が世界史を書き換える」の内容(未読なのでなんとも言えないが Amazon …オンライン・ショップの方ね,の書評で「トンデモくさい」と書かれちゃうようなトーンらしい)と,前述のようにそれをまた「大発見を強調するほどウソ臭くなる」というテレビが取り上げたため,ムー大陸とかバミューダ・トライアングルとかの類と思ってるヒトもいるみたいなんだけど,この本は逆にとってもトッツキが悪くて,この種の書物に慣れていないヒトにはとってもタイクツかも知れないがちゃんと実際に発掘したりフィールドワークを行った成果を報告・論述するタイプの「論文」である。前著でこの文明の存在に疑いを持ち,トンデモ本扱いしたヒトは,引き続き自説を主張するために本書を精読するべきだろ(でも前著より高い)。


 ま,そういうのって難しいよね。そもそも考古学とかは…考古学に限らないか,大抵の研究活動というのは地味の星から地味で作った衣服を着て地味を広めに来たみたいなコトの繰り返しなのだ。けど何ゴトにも利益と効率を求めるご時世,あんまり目立たないでいると研究の意義が疑われついでに予算も削られちゃうから,世間の耳目を集める機会があればそのチャンスは十二分に活用せねばと思う。思うんだけど,元来そういうことに向いてないから地味な研究をやってるようなヒトが多いので,そこのトコロをついやり過ぎ…というか「視聴率や本の売り上げがすべてだぜ」のヒト達に押し切られちゃう。

 一体だけだけど2m近い身長の遺体が出たと言えば「それっすよ! アマゾン古代文明を作ったのは巨人族か! で行きましょう」となるし,地味な発掘チャートとか載せようとすれば「センセイ,こんな図,誰も見ませんよぉ。もっとなんか夢のある話ないんすか?」とか言われちゃう。で,揚げ句の果てに真面目な視聴者や読者には「トンデモぢゃね?」と…これがオレの勝手な「観てきたようなウソ」であれば,その方がずっといいんですけど。


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