凍った地球-スノーボールアースと生命進化の物語 田近英一著

 スノーボールアース理論,すなわち地質学的な証拠から過去に地球は赤道までぜんぶ凍り付いたことがあるらしいという学説については,かなり前に「日経サイエンス」(いや,当時はただの「サイエンス」だったかも?)で読んだ記憶があって,この本の存在を知ったときには「ああ,あの学説もどうやら市民権を得たというか,プレートテクトニクスや隕石による恐竜絶滅みたいに「荒唐無稽だがホントらしい」いうことになったのかな,と思った。

 買うことにしたのは副題にある「生命進化の物語」って部分に眼がいったから。あれ,だって地球が凍り付いたのは20億年前とかの,まだ地球に生命が生まれてたか生まれてないかわかんない頃の話ではなかったっけ,と。

 その方面に不案内なヒトのために(オレだって観てたわけぢゃないが)ざっと地球の歴史をおさらいすると,この惑星はだいたい46億年くらい前に出来上がった。そっから約6億年,これを冥王代というんだが,の間のことは地質学的な記録がほとんど残ってなくてわからない。オレは勝手に「きっとドロドロで何も固まらなかったんだな」とイメージしてるんだけどね。

 40億年前になってようやく…神話風に言えば重いものは下に固まり軽いものは上に浮かんで,一応研究対象となる標本みたいなものが残るようになる。これがざっと15億年で「太古代」と呼ばれてる。それに続くのが「原生代」の約20億年。地球最初の生命はこの期間に誕生し,なにがあったのか知らないが,約5億4200万年前になって突然,異常といっていい進化・多様化を遂げた。

 これを一般に「カンブリア爆発」といい,こっから現在までを「顕生代」と…地質学的にはいうんだけど,生物史を考えるとそれぢゃあんまり大雑把すぎるだろってんで,この「顕生代」の中身を「古生代」「中生代」「新生代」と分け,それでもまだ足りなくなって「古生代」を「カンブリア紀」「オルドビス紀」「シルル紀」「デボン紀」「石炭紀」「ペルム紀」に,「中生代」を「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」に,「新生代」を「古第三紀」「第三紀」「第四紀」に細分化してる。

 でだ。

 この本によれば,上の原生代前期の約22億年前と,後期にあたる約7億年前の二度,地球は全球凍結,すなわちスノーボール状態となり,そしてまたそのことが生物の進化に多大な影響を与えた,どころかもしこの全球凍結時期がなかったらワレワレは今こんな風に人類ヅラしてこんな本を読んだり酒飲んで酔っぱらったりコうるさい選挙カーに悩まされたりしてなかったかも知れないのである(最後のはその方がよかったか)。

 なんで地球全部が凍り付くなんて現象が起こりえるのか,とか,どんな証拠が確かにそれがあったことを示しているのかとかいうコマカイことについては実際に読んでいただくしかないが,そこから算出されるハビタブルゾーン(地球のような惑星環境が実現するであろう母星からの距離)の狭さ(0.95~1.37天文単位…1天文単位は太陽から地球までの距離)にはココで戦慄していただこう。金星(0.72)は太陽に近すぎ,火星(1.50)は遠すぎた。

 結論から言えば,ホンマに我々は生きてるだけで宝くじに当たったみたいな存在なのである。だものもう一度は当たらないよ,普通。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: