国際市場で逢いましょう ユン・ジェギュン監督

 1950年10月ソヴィエト連邦の要請を受けて朝鮮戦争に参戦した中国人民軍は12月,韓国・国連軍に占領されていた興南港を奪還。中国,北朝鮮国境から退却した国連軍に一般市民が加わった約10万人がアメリカ艦船によって南に脱出した。

 父(チョン・ジニョン)と母(チャン・ヨンナム)に連れられ,すぐ下の妹マクスンの手を引いてその混乱の中にいた少年ドクスは,船によじ登るときに妹を落としてしまう。泣き叫ぶ彼に父が言う。「いいかドクス,俺がマクスンを探しに行く。もし戻らなかったらお前が家長だ。家族を,母さんや弟たちを守れ」。そして父は還らなかった。一家は釜山の国際市場にたどり着き,父の妹コップン(ラ・ミラン)のもとに身を寄せる。

 時は流れ1963年,青年となったドクス(ファン・ジョンミン)は港湾での肉体労働で一家を支えていたが,頭のいい弟スンギュがソウル大に合格。その学費を工面するため西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行くことに。ハンボルン(現在のデュースブルグ)の炭鉱での過酷な労働のなか,同じように韓国からこの町の看護学校に来て看護婦見習いとして働いているヨンジャ(キム・ユンジン〜あの「LOST」のサンである)と出会って恋に落ちるが,親友ダルグ(オ・ダルス)とともに鉱内での爆発事故に遭遇,九死に一生を得た。

 1966年,3年ぶりに帰国したドクスは,妊娠して彼を追ってきたヨンジャと結婚。1973年には念願だった海洋大学に合格するが,わがままに育った末妹クッスン(キム・スルギ)が多額の結婚資金をねだり,飲んだくれの叔父が,叔母の死後経営の傾いていた「コップンの店」を手放すと言い出す。店の存続にこだわるドクスは自分が店を買い取ると宣言,その資金を得るべく,民間技術者としてベトナムの戦火の中へ旅立っていく。

 朝鮮戦争で父を失い,少年の身で「家長」という重責を背負った男の人生をたどる語り口はほとんど「フォレスト・ガンプ」。が,まるでアメリカのネガのような韓国の20世紀後半を一つの家族を通して描き切ったシナリオは「フォレスト・ガンプ」を超えているんぢゃないか。

 朝鮮戦争時に離散した家族を探すKBSのTV番組に出演したドクスが,アメリカ在住の妹マクスンかもしれない女性と互いに手探りで記憶を蘇らせるシーンには息がつまる。ドクスがなぜあれほどまでに「コップンの店」にこだわったのか,という理由が明らかになるフィナーレも見事。


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