神は実在し,ブリュッセルに住んでいる。彼(ブノワ・ポールヴールド)は趣味で世界を作り,災害や戦争を起こし,人々を困らせるのがなによりの喜び。最近凝っているのは「法則作り」,「バスタブに漬ると電話が鳴る」とか,「パンはジャムを塗った面を下にして落ちる」とか,こういうちょっとした不幸を自分のパソコンに打ち込んで「現実」にしている。
神の家は三人暮らし。彼は家族にとっても暴君だ。TVはスポーツ番組しか見せず,なんでも頭ごなしに自分の言う通りにさせようとする。娘のエア(ピリ・グロワーヌ)はそんな父親が大嫌い。彼の横暴に耐えるだけの母(ヨランド・モロー)にもイライラ。話し相手になってくれるのはかつて家出し,今は置物になっている兄のJC(ジーザス・クライスト)だけ。
ある日,寝ている父からパソコンルームのカギを盗んだエア,全人類に父が勝手に決めた「余命」をメールで送り付け,洗濯機の抜け道をたどって下界に家出。JCのアドバイスにしたがって最初に出会ったホームレスのヴィクトール(マルコ・ロレンズィーニ)を記録係に指名,これから6人の使徒を見つけるからその様子を「新・新約聖書」として記録してねと…。
そしてエアは次々と使徒となる男女(家出する前に父のファイルからテキトーに6人選んだ)を訪ね歩く。孤独な片腕の美女,余命を知ってベンチから動かなくなった会社員,セックス依存症になった男,妻より長生きできると知ったときの夫の態度に絶望した主婦,銃を買った男,そして余命54日の女の子になりたい男の子。
一方,エアの行為に気がついた神。怒りに任せてエアを追い,部屋着(ガウンにスリッパ)のままで下界に降りて来たがやることなすこと失敗続き。しかもそれらがみんな,自分が喜んで作っていた「法則」に従って起きていることなので苛立ちもひとしお。それでも紆余曲折の末,なんとかエアを発見するのだが…。
とにかく不思議な文法で紡がれた不思議なリズムの映画。「アメリ」に似てるかな。一部に神を冒涜してるとかそういう批判もあったと聞くので,つまりはこれ,映画として成功している「ドグマ」ということでいいんぢゃないかな? え,「ドグマ」って何だって? 「ドグマ」という映画を観てないひとは忘れてください。