江戸の媚薬術 渡辺信一郎著

 オビ…いやこの本の場合にはコシマキですかね,に「元祖バイアグラはこれだ!」とあるが,さすがは天下泰平の江戸260年,教科書には載らないがそっち方面の文化も夜ごと咲き乱れていたのである。

 不真面目だとか不謹慎だとか目くじらを立てる向きもあろうと思うが,日々戦争の算段してるくらいならスケベで平和ボケの方がよっぽどよろしい。まさに勃たなくなったへのこを補助する鎧形(鼈甲や水牛の角で作った…なんてんですか,ちんちんの添え木みたいなもの)を詠んだ川柳「具足着て笑わせる世の有難さ」である。

 紹介されているクスリはオットセイのナニを使った強壮剤「一粒金丹」(たしか「宮廷女官チャングムの誓い」にも似たようなのが出てきました)から腎虚の治療薬「地黄丸」,行う時に先っちょに貼り付けると快感が増すという「喜契紙」,同じ効果だが女性の方に施す「蝋丸」「女悦丸」…その名もオツな「寝乱髪」に「床の海」。

 そして両国四ツ目屋(両国にあったソレ専門の薬屋らしい)の看板の名高い「長命丸」。これはある種の勃起持続薬で,唾で溶かしてへのこに塗り,ふき取ってからコトに及べば硬直至極,相手が満足してこちらもイキたくなったら唾でも水でも一口飲めばたちまち萎むという魔法のクスリである。

 つまり「長命」にするのは勃起時間であって男のイノチではないので,川柳に曰く「長命の薬命の毒となり」など。…「あべこべさ長命丸で死ぬといい」「死にますの声に末期の水を飲み」。このヘンはすげぇ洒落てるよね。 


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