1962年,骨形成不全症という病気が原因で,全身の骨が折れているという状態で生まれ,4歳のときデューク・エリントンを聴いてピアニストを志し,13歳地元のジャズ・フェスティバルでクラーク・テリーと共演。ローマ法王の前で演奏し「フランスが生んだ最高のジャズ・ピアニスト」と呼ばれながら身長はついに102cmまでしか伸びず,1999年36歳の冬,ニューヨークで客死。これがこの映画の主人公,ミシェル・ペトルチアーニの生涯である。
何を隠そう,一番驚いたのは「ペトルチアーニってオレより歳下だったんか!」ということだった。1999年に死んだとき,どっかで年齢を見なかったのかなぁ,50歳くらいかと思ってたよ。映画の中で誰かが13歳だった彼について「13歳の彼はメキシコかとこかのピアノバーに迷い込んだ,人生に疲れた黒人ビアにストのように演奏した」と言ってたが,その演奏はまさに年齢不詳。
映画は遺されたフィルム,写真で彼の生涯を追い,その時どきに関係の深かった人々へのインタビューを挟む。16歳でコンビを組み,当時自分では歩けなかったミシェルを抱えて歩き回ったドラマーのアルド・ロマーノ。1980年代の初め,カリフォルニア,ビッグサーで出逢ったチャールズ・ロイド(そう,あのキース・ジャレットを見いだしたチャールズ・ロイドである)とその妻ドロシー,5年後ニューヨークに移ったミシェルが組んだショーン&ナスティ・ボーイズの面々。
そして女性たち。ニューヨークで彼の恋人だったユージニア・モリソンは「出会って一晩話したわ。次の日に逢ったら友達に『いまの妻だ』って紹介してた」と笑う。ミシェルの一人息子,アレキサンドル(彼と同じ病気を持っている)の母親でもある二番目の妻マリー=ロールも似たような話を。彼は自信家で天才で好奇心の塊。そして特に胸の大きな女性に抱きかかえられるのが好きだった。
演奏の秘密も明かされる。オレがずっと疑問だった,ミシェル・ペトルチアーニはどうやって届かないピアノのペダルを踏んでいるのか(演奏シーンを映したビデオはあっても,指先はともかく足元を映しているものは少ない)。あ,でもこれは映画を観に行くヒトのお楽しみにしておこう。ピアノについては…誰かが「モンクやエヴァンスやミシェルが弾くとピアノは彼らの音がする。素人が弾くとそのピアノの音しかしない」と言ってたのも印象的だった。
しかしまいったなぁ。オレ,彼のCDって1枚持ってるだけだったんだが,この映画を観て帰ってきて調べたらほとんど iTunes Storeで買えるんだよね。買えるんだけどさ(と,何枚か買ってしまったよ)。