オデッセイ リドリー・スコット監督

 火星有人探査ミッション「アレス3」のメンバー達は,探査任務中に巨大な砂嵐に遭遇。強風にへし折られたアンテナが飛行士で植物学者のマーク・ワトニー(マット・デイモン)を直撃し,彼からの通信が途絶える。着陸船に戻ることのできた6人の生命を守るため,指揮官メリッサ・ルイス(ジェシカ・チャスティン)はワトニーを残して軌道上の宇宙船ヘルメスへの帰還を決断する。実際,宇宙服に穴があいた状態でワトニーが生きている可能性はほぼゼロに等しかった。

 ところが…嵐が治まった火星の荒野でワトニーは意識を取り戻す。アンテナが突き刺さった傷からの出血が凝固して宇宙服の穴を塞ぎ,酸素のロスを最小限に抑えたのだ。残り少ない酸素と傷の痛みにもうろうとしながらベースキャンプにたどり着いた彼は,仲間達が自分を置き去りにして出発してしまったことを知る。次の火星探査船がやってくるのは4年後,残された食料は絶望的に足りない。

 しかしワトニーはへこたれない(アメリカ人だなぁ,と思う)。原作小説の邦題は「火星の人」なんだが,こっからの彼はさながら「火星のロビンソン・クルーソー」である。キャンプに残された資材を使って水と空気,それから電力の自給をなしとげ,次に(自分を含む)クルー達の排泄物を使って「腐葉土」を生成,食料として備蓄のあったジャガイモを種芋にして殖やし始める。

 一方,観測によって彼の生存を知ったNASAは大騒ぎ。次のミッションまでワトニーが生き延びられないと判断した長官のサンダース(ジェフ・ダニエルズ)はこのニュースの広報を抑えようとするが,ワトニーが古いパス・ファインダーを修理して地球との交信を可能にしたことで事態は一変。火星探査の責任者カプーア(キウィテル・イジョフォー)の指揮下ワトニー救出計画が始動する…。

 サンドラ・ブロックが主演した「ゼロ・グラビティ」のようなジェットコースター感がない分,広大かつ不毛な光景(ロケ地はアリゾナ辺りか?)のなかで主人公ワトニーの孤独がひしひしと身に迫る。そんなにジャガイモばっかりで栄養バランスは大丈夫なのかとか,ディスコ・ミュージック狂いの隊長以外だれも自分の音楽コレクションを持って行かなかったのかとかつまんないツッコミは思いつくけど,文句なし,これはリドリー・スコットの新たな代表作になった。


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