コニー・ウィリスのタイムトラベル・シリーズで一作だけ読み残していた「ドゥームズデー・ブック」上下巻をようやく読み終えた。読み残していたっていうけど実はこれが彼女の書いたタイムトラベルものの最初の本なんだよね。
時は21世紀半ば、歴史研究者の夢である「過去への時間旅行」が可能になる。お馴染のタイム・パラドックスなどというものは発生せず(それが発生するような場合にはそもそもその「道」が開かない)、ということはつまり物語は「タイム・パラドックスが起きちゃう!大変だ」という、タイムトラベルものの七割くらいを占めるであろう安易なサスペンスには陥らない。
ちょっと先走ったな。オックスフォード大学ブレイスノーズ・カレッジ(オレもこのシリーズで知ったのだが有名なオックスフォード大学っていうのはこのブレイスノーズを含む39ものカレッジの複合体なのだ)中世史科の学生であるキブリン・エングルはこのタイムトラベル装置を使って自分の研究対象である14世紀へ向う。これほどの時を遡るのは彼女が初めて。
タイムトラベルの専門家で、非公式にキブリンを指導しているベイリアル・カレッジ(と表記されているが「ベリオール」が一般的か)の教授ジェイムズ・ダンワージーは未知のことがらが多すぎると反対するが、キブリンの直接の指導教官であるギルクリストらは大乗気、クリスマスを目前に控えたある日、キブリンは14世紀に旅立って行く…のだが、その直後、ネット技術者バードリが「なにかがおかしい」とダンワージーに異変を伝えようとしながら果たせないまま病に倒れてしまう。
一方14世紀のイングランドに着いたキブリンも直後に同じ病で意識を失って、現代に戻るためのランデブー・ポイント「降下点」の場所が分からない。運び込まれた屋敷で回復し、その家の娘たちの世話をしながら自分をここまで運んでくれた騎士、神父などからその場所を聞き出そうとするものの次から次へと思わぬ事件が発生し…。
いやぁ現代と14世紀で全くテイストの違う物語が展開する構成は見事。しかも最後は…いやそれは書くまい。さすがにヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を総なめにした傑作なんだが、ひとつだけ未解決の問題がある。…いやきっとわざとなんだろうけどさ、学部長のベイジンゲームはいったいどこに行ったのよ?