祈りの幕が下りる時 福澤克雄監督

 TVドラマシリーズ「新参者」で映像化が始まった東野圭吾原作による加賀恭一郎シリーズの最新作(にして,最終作かな?)。

 葛飾区小菅の木造アパートで女性の腐乱死体が発見される。被害者は滋賀県在住の押谷道子(中島ひろ子),死因は絞殺。部屋の借り主は越川睦夫,だが行方不明。捜査に当たった警視庁捜査一課,松宮(溝端淳平)は,道子が殺されたと思しき時期に荒川を2キロほど下った河川敷で焼死したホームレスとの関連を疑うが,死体のDNAは越川の部屋の慰留物とは一致しなかった。

 道子が上京した理由を調べるため彦根を訪れた松宮は,彼女が中学の同級生で演出家である浅居博美(松嶋菜々子)に逢いに来たことを知る。博美は道子が上演中の「異聞・曾根崎心中」の初日に訪ねてきたことを認めたが,席を用意してあげられずその日のうちに彦根に帰ったと思っていた,と言う。

 しかし松宮は博美の事務所で意外なものを目にしていた。それは従兄弟で現在警視庁日本橋署に勤務する加賀恭一郎(阿部寛)が写った写真。場所は警察の道場か,加賀は剣道着姿で同じ格好をした十人程の子供たち,そして浅居博美と一緒にフレームに納まっていた。

 その足で加賀の元に向かった松宮は,その写真が十数年前、博美が全日本選手権を獲ったこともある加賀に子役への剣道指導を依頼した時のものであることを知る。問わず語りに事件を概要を語る彼に,加賀は焼死体と一致しなかった越川のDNAはなにから採取したものかと質す。ありがちな歯ブラシなどから取ったものであれば偽造された可能性もあるのでは,と。

 この加賀の読みが当たり,また越川の部屋に残されたカレンダーの各月に残された橋の名前のメモが十数年前に仙台で横死した加賀の母親・百合子(伊藤蘭)の遺品に書かれたもの一致したことから,捜査一課は加賀を捜査本部に招聘。加賀は百合子が死の直前に心を通わせていた綿部という男が死んだ越川ではないかと推理するのだが…。

 かなり原作に忠実な映像化。小説の段階で取りざたされた松本清張の「砂の器」(映画は野村芳太郎監督)を意識してるてな評も読んだが,そこらは誰が撮ってもこうなるんぢゃないかとも思えた。たしかに面白いけど「小説を判りやすく絵解きしただけ」という印象がぬぐえない。面白いんだけどね。


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